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リンゴの赤色
デザインリテラシーの授業で学生たちが「リンゴのような赤」を実際に絵具で再現すると、原色に近い鮮やかな赤、ワインのような紫色に近い赤、オレンジのような赤など、個人差が大きく、言葉だけで色を正しく伝達するのは意外に困難であることがわかります(図2-1-1)。
その原因としては、それぞれの学生が見てきたリンゴの品種が違うためかもしれませんが、実際のリンゴと比較してみると再現された色の多くは鮮やかなもので、ある程度、都合よく解釈されて記憶しているのではないかとも考えられます。
「記憶色」があいまいであることは、色彩心理学の分野では多くの研究から明らかで、武蔵野美術大学で色彩学の教鞭をとっていた千々岩英彰も「色の特徴的な部分は強調され、そうでない部分は無視され、赤いものはより赤く、青いものはより青く記憶される可能性が高いということである。そして、個人差が比較的大きい。」と述べています。