〈レクチャー2〉輪郭を見出す

主観的輪郭とは、輪郭線に沿った輝度や色の変化が存在しないにもかかわらず、あたかもそこにかたちが存在するかのように見える輪郭のことです。
図を形成する要素の相互補完による効果と見ることもできます。

脳が積極的に見ようとしているものの実際には存在しない線が主観的輪郭となっているため、背景より明るく手前に強調されて見えるともいわれています。

主観的輪郭の代表的な図に「カニッツァの三角形」があります(図1-2-1)。これはイタリアのカニッツァにより1955年に発表されました。「カニッツァの三角形」は、錯視図形とよばれるものの1つです。

この図は3つの黒い円盤と、3つの折れ曲がった直線による括弧「<」のかたちに囲まれた周辺図形によって、その内側の領域に白い三角形が存在するように見える図です。
白い三角形は背景よりも明るく見え、三角形の輪郭線も知覚されます。しかし実際には輪郭線は存在せず、明るさも変化していません。

エーレンシュタイン錯視」も主観的輪郭の例として代表的な錯視図形で、ドイツのエーレンシュタインが1941年に発表しました(図1-2-2)。
放射状に引かれた線の中心付近の先端によって円があるように見えます。

「カニッツァの三角形」と同様に、主観的輪郭によって見えているかたちの色は背景と同じはずですが、背景よりも明るく見えます。

主観的輪郭は、かたちを把握しようとしたとき、手前にある図によって背景となる地の線が遮蔽され見えなくなると判断し、存在しない輪郭線を補間しようとする知覚の特徴を示すものであり、図と地を分化して知覚する脳の情報処理の過程に起因しています。

また、図となる領域をより明るく強調して知覚する効果があることから、シンボルマークやロゴマークで主観的輪郭が応用されることもあります(図1-2-3, 1-2-4)。

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